【レビュー】ottobock Genium X3

シリーズ物として、今まで僕が実際に試着してみた数々のコンピュータ制御膝継手の印象を、忖度なしにレビューしていきます。4本目は、オットーボック社の「Genium X3」(ジニウム エックススリー)についてです。

Genium X3(プロテクター装着時)
メーカーottobock(オットーボック)
モデルGenium X3
膝継手重量1.71kg
膝屈曲角度135°
体重制限150kg
駆動装置油圧システム
IPグレードIP68(3M防水)
*チューブアダプター(2R19)はGenium X3専用のものになります
はじめに

オットーボック製のコンピュータ制御膝継手のなかでも、Geniumの性能や機能はC-Leg等を凌駕しています。
例えば、*階段を一歩ずつ交互に上ることができたり、障害物を乗り越える際も足を大きく振り回してまたぐ必要がなく、足を前に振り出して乗り越えることが可能です。
Geniumの最大の魅力は、「人体の生理学的な歩行に限りなく近似していること」だそうで、使いこなせるユーザーであれば、周囲に義足であることを気づかれないほど滑らかに歩けます。そんなGeniumをベースに、さらに防塵・防水(*IP68)を備えた、いわば最強の義足システムが存在するのです。それが、Genium X3(以下:X3)です。
元を辿ると、X3は軍用目的に開発されました。この膝継手は、戦地に赴き負傷して大腿部を切断した兵士を、歩いて再び戦地に戻す目的で設計されています。そんな極限の環境下で故障せずに耐えられるよう、電子機器としては最高レベルの防塵・耐水性能を備えています。X3なら砂埃の舞う荒野を歩こうが海水の中を歩こうがヘッチャラです。
*断端筋力とトレーニングが必要となり、切断条件によってはできない場合もあります。
*IPとは電気機器の保護等級の規格のことで、6は防塵の最高レベルである6級を示し、8は防水の最高レベルの8級を示しています。

レビュー

お値段が700万円以上もするX3ですが、リハビリ中に1週間ほど借りることができました。X3で施設内を歩いているとPOなどが寄ってきます。また、どこで噂を聞きつけたのか、大腿義足ユーザーがX3を見にわざわざ施設に来たりと、X3の宣伝効果はすごいんだなぁと思いました。きっと多くの大腿義足ユーザーにとってX3は特別な存在なのでしょう。しかし、僕が装着して実際に歩いてみた感想は意外な印象でした。

Genium X3による歩行訓練の様子


X3はC-Leg4より膝の伸展は滑らかだけど、他の膝継手のように完全には膝が伸び切らず、踵接地の際は膝が5度曲がったまま接地します。これが上述の通り「より自然な歩行状態に近づけるための仕様」とのことですが、この5度曲がったまま接地する感覚が僕にとってはかなり不快でした。
条件が片足大腿切断か、中断端~長断端の比較的条件の良い両足大腿切断の場合でしたらX3は快適かもしれませんが、両足とも短断端の自分にとっては、X3よりむしろC-Legの方が快適だと感じました。C-Legも最新モデルのC-Leg4より、既に国内販売が終了しているC-Leg3の方が適合する印象でした。その理由はソフトウェアにあり、細かい調整が可能だからです。Genium(X3を含む)やC-Leg4は油圧抵抗の数値調整(パラメータ)が簡略化されており、設定できる項目や調整幅が狭いのです。機械式膝継手でも歩ける片足大腿義足ユーザーにとっては些細な部分であっても、健側のない両足が短断端の自分にとっては、コンピュータ制御膝継手のソフトウェア上で行えるミリ単位の油圧の微調整が歩行にかなり影響します。
さらに、断端が短い場合は義足のパーツ選定の際に重量も重要視します。X3は1,710gあり、C-Leg4は1,240gです。たった470gの差ですが、X3を使い続けていくことを想定すると、今のソケットとライナーピン式の懸垂方法では短断端の僕には重いのです。仮に股義足のような腰で義足を懸垂する方法でしたら、重量に対する印象は変わっていたでしょう。

こうして書くとなんだかマイナス面ばかりな気がしますが、そうでもありません。X3には革新的な部分もあります。それは充電方法がマグネット式であることです。C-Legは昔ながらの充電プラグを膝継手のポートに挿し込むタイプですが、これが面倒臭いんですよね。奥までしっかり挿さないと充電されなかったり、そもそもポートが小さくて微妙な角度がついているため挿しづらい!でもX3(最近販売されたKenevoも)は、マグネット式の充電方法なので、膝の裏側に充電器をピタッとつけるだけで充電できます。しかもバッテリー残量を直感的に色で目視できるため、とても便利です!毎日使うからこそ、こういう身近な部分のデバイスの使用感は大事だと思います。

つらつらと綴ってきましたが、結局義足は高額なものだから最高というわけではなく、人それぞれに適合する最高の組み合わせがあるということです。条件によっては妥協も必要でしょう。走ったり跳んだりする条件の良い片足大腿義足ユーザーの中には、最新のコンピュータ制御膝継手の性能がかえって煩わしく感じる人もいます。
あくまで個人的な感想ですが、同じような境遇の方やこれから義足を作るひとに少しでも参考になれば幸いです。

ちなみに、Geniumは2018年4月より完成用部品に認可されましたので公費による支給対象ですが、X3は認可されておりません。購入するのであれば原則的に自費となります。なぜ「原則的に」かと言うと、例外もあるからです。大腿切断者の中にはX3を支給された人もいます。

それでは最後に恒例の、この膝継手を僕の大好きな自動車に例えてレビューを締めたいと思います。

Genium X3は、義足界のマローダーなり!
マローダーとは、市販されている車両の中では世界最強の装甲車です。

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