下肢切断者と運動

みなさんは普段から運動をしていますか?
僕たちは小さい頃からずっと「運動したほうが良い」と言われて育ってきました。
少しでも体調を崩すと、「体がなまっているから」とか「普段運動をしていないから」などと思うことがあるように、無意識に健康と運動を結びつけています。

運動は何故するべきか?そして運動はどれくらいした方が良いのか?
切断者である僕の視点から考えてみました。


運動とは体を動かすことです。人間には、動物としての動くメカニズムが備わっています。
しかし、現代では動く機会が減っていることに加えて、食べる量やカロリーなど、エネルギー摂取量が増えています。だから体を動かす機会を増やし、消費エネルギーを高くしようという訳です。

下肢切断者は、車椅子ユーザーや義足ユーザーになり、歩行という移動運動に制限がかかります。動かなくなった、あるいは動けなくなったことで、健常の時よりも消費エネルギーが低くなる人もいます。
しかし、移乗や車椅子駆動や義足歩行は、エネルギー消費の高い運動です。

健常の足で歩くよりも、義足で歩くことの方が何倍も大変です。
その日の体調や断端の状態を気にし、路面や周囲の状況を把握しながら、義足を振り出して安定した歩容を常に意識しなければなりません。
運動量が増えるだけでなく、精神的にも疲労します。その度合いや量によって消費エネルギーは高くなり、実際は健常の時よりも運動している人が多いかもしれません。

普段から車椅子をこいでいたり義足で歩いていたりする切断者は、さらに”運動”をする必要があるのか疑問に感じました。
下肢を切断してから太ってしまった人、体力や筋力が衰えてしまった人は、運動としてあえて体を動かす必要があると思います。それ以外の人は、個々人の体質や普段の活動量によって様々で、無理に運動をしなくても良いのではと考えます。

東洋経済オンライン「1日1万歩で健康」は大きなウソだったという記事では、“ほどほどの運動”こそが健康に対する万能薬と語られています。

運動の強度に関しては中等度が良く、ウォーキングでいうとなんとか会話ができる程度の速歩きとしています。まさしく、僕が義足で散歩している感覚がこれに当てはまります。

他にも興味深いことが書かれていたので抜粋します。

長寿遺伝子とは、体内で細胞の損傷を防いだり、エネルギー生産に影響を与えたりしている「サーチュイン」という酵素をつくるはたらきをもった遺伝子のことです。

-中略- 誰もがもっている遺伝子であるにもかかわらず、普段は眠っていて、いつどのようにすれば活性化するのかまでは解明されていませんでした。ところが、その後もさらに研究が進められた結果、「1日20分程度の中強度の運動を2カ月続けることで、長寿遺伝子のスイッチが入る」ことが証明されたのです。

-中略- 2カ月間ほど休むと、長寿遺伝子は残念ながら再び眠りに就いてしまいます。

この文章を読んだ時、僕ははっとしました。リハビリを受けていた8か月間、毎日運動し続けていて、常に気持ちが昂っていてエネルギッシュでした。あの感覚は、まるで体中の細胞が覚醒しているようで不思議に思っていたので、この話を実際に体験していたのかもしれません。
とはいえあの頃は、熱発、断端の損傷、股関節の損傷などありとあらゆる不調が現れていました。その原因は、運動のしすぎだったと断言できます。
自分のキャパシティを超えるほどの運動は、自分の身を滅ぼします。

今は毎日運動できていませんが、僕はそれでいいと思っています。
自分の身体をマネジメントしたうえで、運動と付き合っていくべきだと考えます。

過去の記事
両大腿義足ユーザーのエネルギー消費 ,義足で歩む人生 ,両大腿切断者の筋トレ
参考資料
下肢切断者の全身持久力(リハビリテーション医学,1997)
オーバートレーニング症候群(厚生労働省)
切断者のフィットネスアプリ義足編(ottobock)

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